2022.03.17

ポスト・コロナの未来で、観光客の方々を温かく“ウェルカム”するには―?
ウェルカムんちゅオンラインサミット開催レポート

コロナ渦により、移動や旅行が制限される日々が続いています。ただ近い将来、また国内外から多くの方々が沖縄観光に来られる時がきっと訪れることでしょう。 そんなポスト・コロナの沖縄において、観光客の方々を温かくお迎えするために、そして「また沖縄に来たい」と思えるような素晴らしい体験をお届けするために、“ウェルカムんちゅ”として何ができるのか。 そんなテーマと向き合うべく、県内各地のウェルカムんちゅリーダー4名をお迎えし、オンラインサミット『ポスト・コロナのウェルカムんちゅを考える会2021』を実施しました。

対談メンバー

ミドルトンさん

ミドルトン有希子(一般社団法人宮古島観光協会)

當間さん

當間文隆(沖縄県立与勝高等学校 沖縄県立与勝緑が丘中学校 高校教頭)

當山さん

當山清博(一般財団法人本部町観光協会 会長)

崎濱さん

崎濱秀明(一般財団法人本部町観光協会 事務局)

友利

進行:友利至伯(事務局)

ポストコロナにおけるウェルカムんちゅの役割

友利

友利ウェルカムんちゅリーダーの皆さん、本日はよろしくお願いいたします。ではまず、ポストコロナにおいてウェルカムんちゅがどのような役割を担っていくべきか、ご意見を聞かせてください。

ミドルトンさん

ミドルトンさん感染状況は落ち着きつつありますが、観光客の方が一気にドッと来るのはまだ怖いかな……という島民感情はあると思います。なので、宮古島観光協会が「国内外からのお客様と島民との窓口」として、間を取りもつような立ち位置になるのがベストかなと思います。

友利

友利なるほど。島民の方々自身にウェルカムんちゅになってもらうのはどうしたらいいか、何かアイデアはありますか?

ミドルトンさん

ミドルトンさん沖縄、そして宮古島の人はもともと人懐っこいんですね。コロナが再度まん延する前の昨年末は、観光客の方がけっこう来ていましたが、島民の皆さんは「コロナが収まっている今のうちに遊んでおけばいいさ~」という感じでした(笑)。ただ、情報に振り回されやすいところはあるので、やはり国内、島内での落ち着きがある程度必要かと思いますね。

ミドルトンさん
當間さん

當間さん私は観光業の人間ではなく高校の教員なのですが、高校生に対してできることは「ホスピタリティを高めること」かと思っています。例えば、カメラを持っている人がいたら写真を撮ってあげて「良い旅を」とひと言伝えてあげるなど、少しでもウェルカムんちゅの精神で観光客の方に接してほしいですね。

友利

友利以前に大学生とウェルカムんちゅについて話す機会があったのですが、その際に「ウェルカムんちゅを県内で広めるには、学校を巻き込んだほうがいいんじゃないか」という話が出ました。

當間さん

當間さんすべての社会課題を学校で引き受けるのは難しいですが、生徒のホスピタリティを高めることは、学校も含めた教育全体でできることかなと思います。例えば、外部で教材を作っていただいて、それを教育委員会経由で学校に紹介してもらうなどですね。

崎濱さん

崎濱さん先日、地元の中学校で観光の授業を行った際に伝えたのは「みんなひとりひとりがウェルカムんちゅ」ということ。道を教えてあげる、ごみを拾う、捨てる。できることは身近にたくさんあって、皆さんの何気ない行動や言葉一つひとつがウェルカムんちゅなんだよ、という認識を持ってもらうための発信をしています。

當山さん

當山さんお客さんを迎えるときには「はいさい」、帰るときには「またやーさい」。「いちゃりばちょーでー」ということを相手にしっかり伝えながら、言葉を通してお客さんに安心してもらうのが、ウェルカムんちゅでは一番大切ですね。例えば、丁寧に道案内をして、「分からなかったらここにお電話ください」と伝える。そのような形でお客さんに常に安心を与えていくことが、ウェルカムんちゅの仕事だと思います。

ウェルカムんちゅにおける“言語”の課題

友利

友利では続いて、ウェルカムんちゅや地域における課題は何かございますか?

ミドルトンさん

ミドルトンさん宮古島は、交通標識の多言語表示がまだ進んでいないですね。日本語の標識もまだ少なくて。。。車がないとどうしても移動が難しいので、交通インフラの多言語化が今後必要になるかと思います。

當間さん

當間さん交通と言えば、バス停の表示は分かりにくい気がしますね。土日は減便になるけど、そういった表示は外国語でされていたかなと。沖縄の人でも分かりにくいのに、外国の方なら余計に難しいなと思います。

崎濱さん

崎濱さん多言語看板などはもちろんですが、まず“言葉が通じないこと”が、ウェルカムんちゅやそれ以外の人たちにとっても課題かと思います。翻訳アプリなどもありますが、アプリを使ってまで外国の方に対応しようとはなかなかならない。私も多言語は使えないので対応は大変ですが、仕事だから時間を要して対応ができます。だから、地域の人たちには、自分では対応が難しい場合でも協会に誘導してもらえたらと思います。その連携をどう作っていくかですね。

當山さん

當山さん私は毎日、ウェルカムんちゅの上着を着ています。このように、ウェルカムんちゅがどこにいるのか“見える化”すれば、お客さんや地元の方も「ここに立ち行けば案内してもらえる」と安心できるのかと。そうしてお客さんをすばやく“うとぅいむち”できれば、リピーターを呼ぶことに繋がると思います。

ウェルカムんちゅリーダーに求められること

友利

友利皆さんのようなウェルカムんちゅリーダー自身が、今後もっとやっていくべきだと思うことはありますか?

當山さん

當山さんお客さんの胸の中にいつまでも残るような、地域の魅力と特色をしっかり伝えきれるリーダーになることです。本部町だと、水族館は誰でも知っているけど、地域の足元にある大事な歴史や文化は知らない、というのが現状なんですね。ウェルカムんちゅリーダーが各地の本物の歴史・文化を相手に伝えることで、沖縄の歴史文化がまた本物としてよみがえっていくんじゃないかと思います。

友利

友利確かに、いま自分が住んでいる地域の自慢できることを考えてみると、すぐ出てこなかったりしますね。。。

當間さん

當間さん私は社会科の教員で、沖縄の歴史・文化を座学や屋外で教えることもあります。沖縄の歴史や文化を学ばないといけない、という意識が広まるといいなと思いますね。あとは、外部人材の活用。本校では、総合的な学習の授業で、うるま市の観光協会の方に授業をしていただきました。教員だけじゃなく外部の力を借りることが、これからの授業には必要だと思います。

ミドルトンさん

ミドルトンさん我々も人材育成には力を入れていて、宮古島の総合実業高校さんでは「宮古島の観光について」という授業を何度かさせていただきました。また「SDGs甲子園」という取り組みで、島外の高校生が宮古島に来て、SDGsに関わった修学旅行のプランを考えてプレゼンする機会も作っています。私たちが答えを与えるのではなく、生徒たちが自分たちで考えて話し合って学ぶ。そこで生まれる意見には、いつも目からウロコが落ちますね。高校生の皆さんは、ウェルカムんちゅリーダーにすごく向いていると思います。

當間さん

當間さん確かに、僕よりも高校生がウェルカムんちゅリーダーをやったほうがいいかなと思うことはあります。彼らは、観光客や外国人に道を尋ねられると、一生懸命身振り手振りで教えようとするんです。“高校生ウェルカムんちゅリーダー”みたいな立ち位置があったらいいなと思いますね。

ポストコロナにおいて、“うとぅいむち”の心を取り戻すには

友利

友利このコロナ渦で「沖縄の感染拡大は観光客が原因だ!」という方もいて、観光客の方に対する県民感情が少し悪くなっているように感じます。県民の方に昔のような“うとぅいむち”の心をもってお客さんに接してもらうには、どうすれば良いかご意見をお聞かせください。

崎濱さん

崎濱さんお客さんに寄り添って、話をまず聞くこと。やっぱり思いやりの心が一番大切かと思います。あと、悪いのはコロナであって人ではない。なのに、人同士で責め合うような状況になってしまっているので、もう一度足元を見るべきかという気がしますね。本部町にも「そちらに行きたいんですけど大丈夫でしょうか??」という問い合わせがたくさん来ましたが、私たちはいつでもウェルカムです。

當間さん

當間さん県の統計などを見れば、感染拡大に観光客の影響がどのくらいあったのか分かると思うので、SNSなどで広がった漠然とした情報を鵜呑みにしないことですね。情報を吟味する力は上がっていくと思うので、今後こうした思い込みが減ってくれたらなと思います。あと、沖縄のワクチン接種率や飲み会の様子などを見ると、自分たちが反省するところもありますよね。人のせいにするのは簡単だけど、自分はどうかと省みるのも大事かと感じます。

當山さん

當山さん対策とルール、マナーをしっかり決めて守ること。つまり安心安全の“見える化”。そうすることで、観光地で働く方々、観光地の集落に住む方々が安心してウェルカムできるのかなと思います。

ミドルトンさん

ミドルトンさんまさに、今當山さんがおっしゃったことがしっくり来ました。宮古島でも「我々のことをバイ菌扱いするんですか?」などのご意見が来るなど、心苦しい状況が続いています。お客さまと島民も安心できるようしっかり対策していくことが、ウェルカムんちゅとしてできることかと思います!